狼くん、ふれるなキケン!
勝手にしょんぼりしていると。
「ひな」
「……?」
顔をあげると、狼くんがなにかを差し出してきた。
「ん」
「これ……」
「鍵、持っといて」
鍵……!
さすが、絵本に出てくるような雰囲気のおうちなだけある。
渡されたそれは、アンティーク調のものだった。
「いいんですか……?」
「合鍵だし。逆にひなが持ってないとめんどい」
言い方がトゲトゲしい……けれど。
今はそれよりも、渡された合鍵に心を踊らせていた。
おそろいの鍵、なんて。
まるで新婚さんみたい────そんなことを考えてしまって、数秒後ぶわっと恥ずかしくなる。
ちがう、私と狼くんが……とかじゃなくて、ただ“新婚さんっぽいな” って思っただけ!
なんて、心のなかで謎に言い訳しつつ。
ひとり、じたばたと心を暴れさせていたけれど。
「じゃ、俺戻る」
いそいそと立ち上がった狼くん。
早くも私の部屋から出ていこうとするから。
「……っ!」