狼くん、ふれるなキケン!
引き寄せられた腰に、するっと狼くんの腕が回ってがっちりホールド。
逃げることすらゆるしてくれない。
抱き枕みたいにされて。
これは。
「ね、寝ぼけてますね……?」
「……うるさい……耳元で騒ぐな……」
ずるずると、狼くんの懐に引きずり込まれる。
あぶないオオカミのテリトリーに、うっかり迷いこんだ子羊のような気持ち。
「狼くん、しっかりしてください……!」
「……あー」
「さっきから矛盾だらけですよっ」
失せろ、って口ではそう言うくせに。
今、私のことを掴んではなさないのは狼くん自身だ。
あとで文句言われたって、知らないもん。
────細かいことをとやかく言うのはあとにしよう。
今は。
「ひとまず起きてくださいっ! 朝ごはんが冷めて────むぐっ」
不器用ながらも、頑張ってつくったのに。
お味噌汁とだし巻き玉子。
中学校のときの調理実習がこんなところで役に立つとは。
そんな私の思考回路は突如ぶった切られる。