狼くん、ふれるなキケン!
「っ、ふ、狼く……、ほんとに、だめ……っ」
「……黙れ」
「きゃう……っ?!」
抵抗するひますらなかった。
かぷ、って昨日鼻を甘噛みしたのと同じ要領で。
「っ……!」
み、耳……!
耳、齧られた……!
耳に触れる、とがった歯の感触がこそばゆくて、ぞわぞわと背筋になにかが駆け上がってくる。
「……っ、う……」
私が驚きのあまり黙り込んだのをいいことに、狼くんはぜんぜんそれをやめてくれない。
もう、ほんとに……っ。
くすぐったいやら、恥ずかしいやらなんやらで、じわじわと目が潤んでくる。
これ以上はぜったいだめ……!
「っ、狼くん!!」
正当防衛だから、って言い訳しながら。
目についた狼くんのグレーの髪の毛を思いっきりつかんで引っ張った。
知らなかった、狼くんがこんなに寝起き悪かったなんて……!