狼くん、ふれるなキケン!



「……痛え」




思いっきり髪を引っ張ったから。
さすがに、狼くんも目を開けた。


さっきまでのうつろな目つきとはちがう、ようやくちゃんと覚醒してくれたみたい。


余程痛かったのか、めちゃくちゃ不機嫌だけれど。




「狼くん、はやく支度してください……!」




心のなかで、髪の毛引っ張ってごめんなさい、としっかり謝った。


渾身の力で引っ張ったから、そーとー痛かったと思う、けどそうでもしないと起きてくれなかったもん。

寝過ごすよりも、まだいいはず。




────それに、あのまま狼くんの好きなようにされていたら、冗談じゃなく私の心臓が止まっちゃうところだった。

だって、まだばくばくうるさく鳴っている。






「……は?」



完全に目覚めた狼くん。

まるでたった今気づいたかのような様子で視界に私をとらえて、さらに不機嫌に顔を顰めた。

ぎろり、と睨みつけられる。




「なんで、ひながここにいるんだよ」

「……?」

「昨日、入るなって言ったよな」





責めるみたいに言われる。

だけど、こっちにだって正当な言い分があるもん。




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