狼くん、ふれるなキケン!
「これは例外ですもん!」
「あ?」
「ほら、用があるときはいいって……」
「用って」
「だって狼くんがぜんぜん起きてこないから!」
立派な用事だもん。
むしろ、私の優しさと言ってもいいくらい。
「……放っとけばいいのに」
「遅刻せずに済んだんだから、感謝してくださいよっ」
「で、わざわざ人の寝てるベッドに侵入してきたのは何?」
すっごいトゲのある言い方。
侵入って、狼くんはそういう風に言うけれど。
「そ、れは……!狼くんのせいですっ」
「は?」
意味わかんねーって顔してる。
でも、嘘じゃないもん。
ほんとうのことだもん。
「狼くんが、私のこと引きずりこんで、離してくれないから……っ」
ほら見て、って。
私の腰にしっかりまわった狼くんの腕を指さす。
紛れもない証拠に、狼くんはチッと思いきり舌打ちした。
まじかよ、って不本意丸出しの表情。
それから、その腕はあっけなくほどかれる。
なんの未練もなさげに離れていってしまった体温、ちょっと寂しいな、なんて。