呉服屋王子と練り切り姫

帰ってきた日常……?

 そのままハイヤーへ乗せられ、車の中で切符を受け取り、京都駅まで送り届けられた私は、新幹線の中からぼうっと車窓を眺めていた。
 きっと今頃、ゲーン夫妻は驚いている。甚八さんと三人で、楽しみにしていた金閣周れているのかな……ゲーン夫妻は私を気に入ってくれていただけに、罪悪感が増す。

「モナカチャン、イナイノサミシイネ」

 ゲーンさんと奥さんの悲しそうな顔が脳裏に浮かんで、私はブンブンと頭を振った。もともと、私には関係のない人たちだったんだから!

 その日は誰かさんのせいで有給だったため、やることもなく、家に帰ると来ていた洋服を放り投げジャージに着替えた。
 ………あ、この服どうしよう。あの時は焦っていたり怒っていたりであまり気にしていなかったが、タグには有名ブランドのロゴが入っていた。

「クリーニングに出して、返しに行けばいいか……」

 そんなことを考えながら、ベッドにダイブしてスマホを弄りだした。
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