呉服屋王子と練り切り姫

誰かさんからの入れ知恵

「愛果を連れて行きたいところがある」

 そう言って、彼は私の手をつないだままエレベータに乗る。それは、どんどん上の階へ向かっていく。

「甚八さん、どこへ……?」
「空の上だ」
「はぁ?」

 私がそう言った時には、エレベーターの扉が開いて、ブロロロという音と共に強い風が吹き付けた。

「ほら、ポカンとしてないで行くぞ」

 甚八さんはつないだ手を引っ張って、そこに停まっていたヘリコプターの中へと私を誘導する。

「まさか、また奈良に……」
「行くわけねえだろ。ほら、シートベルト閉めろ」

 甚八さんに促され、何が何だか分からずに私たちは大空へ飛び立った。
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