QUALIA ー最強総長×家出少女ー
そういえば慧さんは、初対面のとき、私のことも知っていた。

AXISの最高幹部という顔の他に、ピアニストでもあるのだろう。

正直、聞きたくないって気持ちだったけど、嫌でも耳にすることになる。

慧さんは鍵盤に指を置き「今、彼女はどこにいるのでしょう?」とお客さんに問いかけた。軽く息を吐き、奏でる。

その瞬間、満天の星空が、目の前に現れる。

足は宙に浮き、夜空へと吸い込まれる。星の中で、月を目指して泳ぐような、不思議な感覚。

この曲は……

「天音だわ…」

お客さんの一人が、うっとりとした顔で言った。

そうだ。これは天音。私の曲じゃないか。

たしか七歳のとき、家族で行ったカナダのイエローナイフで、初めてオーロラを見た。

そのときの記憶が旋律となり、私は天音を作曲した。

世間では私の代表曲とされている。

この曲のおかげで、私は一躍有名になった。
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