QUALIA ー最強総長×家出少女ー
☆☆☆

目を覚ますと、自分の部屋のベッドにいた。

「体調はいかがですか?」

近くには麗於さんがいる。

「大丈夫です。心配かけてすいませんでした…」

麗於さんは「私の方こそ申し訳ありません…」と頭を下げた。

「ピアノのことは、噂ではうかがっておりました。ご両親の不幸をきっかけに、弾けなくなってしまったんですよね…」

私はうなずく。

「共感覚のことは?」
「もちろん。あなたは有名人ですから」

そっか。

みんなはあえて、今まで私のピアノや共感覚について触れなかったんだ。

力を失ってしまっていることを、知っていたから。

「ピアノを弾こうとすると、両親の死を知った日の記憶が、音となって聴こえてくるんです。それが、本当に嫌な音で。病院の先生が“死の旋律”って名付けたんです…」
< 137 / 304 >

この作品をシェア

pagetop