QUALIA ー最強総長×家出少女ー

ルナは私を見つめる。優しさに満ちた目だ。さっきまで敵と抗争していた最強の総長とは思えないほどに。

『やっと……やっと会えた…』

夢はいつも、その一言で終わった。

会えたって、誰に？

すぐに答えは分かった。

共感覚で作られた私のピアノは、その元となった記憶を、聞き手に疑似体験させることができる。

あのとき私は、家族に会いたいって想いで、家族との思い出をピアノにした。

ルナの心も、その記憶を感じたのかもしれない。

ルナにとっての大切な人との思い出。それはきっと、あの写真の女の人だ。

「でも私、今は弾けないんです。どうしても、弾けないんです…」

ルナは私に近づくと、肩の辺りに手を当てる。

「言わなくていい。俺には、琴葉の気持ちが分かる」

ルナは私を抱き締める。温かい心臓のリズム。月が雲に隠れ、暗闇が訪れる。