QUALIA ー最強総長×家出少女ー

呼び止めたのは、楠影蓮(くすかげれん)。幼稚園の頃から知ってる幼なじみで、ひとつ上の15歳。

ベージュの柔らかい髪には緩いウェーブがかかり、たれ目で、緑色の綺麗な目をしている。

「ピアノの演奏はどうしたんだい? もうすぐ時間なんだろ?」

蓮が心配そうに言う。蓮も私と同じピアニストだ。それも昔から天才と呼ばれていて、五歳の時には大人も弾けないような曲を平気で弾いていたらしい。

学校では当然のようにモテる。二ヶ月前に私が蓮に告白されたとき、ファンの女子から軽いいじめにあったほどだ。

「蓮なら分かるでしょ? 私の気持ち…」

蓮は苦い豆を噛んだように、顔をしかめる。そして言う。

「ピアノから逃げてどうするんだい? その先に君の居場所なんて、どこにもないよ」

蓮の言葉に、お腹の底が熱くなった。

「私には、決める権利がないの?」

「ないよ。君は天才だからね」
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