QUALIA ー最強総長×家出少女ー
四年間、ピアノに打ち込んできたと自分には嘘をついてきた。

分かってる。私は結局、ルナのことが忘れられなかった。

瞼の裏には、いつもルナの姿があった。本当はピアノなんか辞めて、ルナに会いたかった。

私の心は、四年前から変わらない。

変わり続ける現実を受け入れられず、過去の思い出ばかりに浸っていた。前に進めず、時を止めてしまいたかった。

そうしている間にも、時間は私達の真下を、頭上を、平等に流れ続けた。

花がどれほど美しく咲こうとも、散っていった花びらが戻ることはない。私達ができるとすれば、また一から種をまき、次の花を咲かせることくらいだ。

「分かってる。だけどルナ。あなたがいない未来に、私はどんな価値を見いだせばいいの?」

再会の約束だけが、私が目指す未来だった。

けれど今となっては、絶対に果たされることのない約束だ。

もう二度と、私のピアノは、一番聴いてほしい人には届かない。

それにもし、ルナが生きていたとして、四年が経った今、ルナは私なんかと交わした約束を覚えていてくれただろうか?

いや、覚えているわけない。

きっともう、ルナにとっての私は、変わってしまっているんだから。

「痛っ……」

一瞬、鼓膜が破れるような金属音がした。あのときと似てる。これはまさか“死の旋律”なんじゃ…?

嫌な予感がした。本番は明日の19時。すでに24時間を切っていた。
< 272 / 304 >

この作品をシェア

pagetop