QUALIA ー最強総長×家出少女ー
「知ってたかい? ポーランドでは日本の車の免許さえあれば、どんな排気量のバイクでも乗れるんだよ」

「ほんとに?」

蓮はまた黙る。

「嘘でしょ?」
「嘘だよ? 何か?」
「バイクの経験は?」
「十五年くらいかな」

エンジン音が猛獣のように唸る。風のように、私達は前へ進む。

「自転車も勘定に入れればね」

時間は残り10分を切っていた。けどここまでくれば、会場はすぐそこだ。

バイクなら余裕で間に合うかもしれない。

そのとき「まずい」と蓮が口走った。

「え?」

目の前の道に、雪がたくさん積もっている場所があった。

バイクはそこへ突っ込む。

蓮はハンドルを取られ、バランスを崩す。

「琴葉、飛び降りろ!」

バイクは転倒し、雪に突っ込む。雪は頭上より高く舞い上がり、目の前が真っ白になる。蓮はとっさに私をかばう。

「蓮!」

私は落ちた拍子に膝を擦りむいただけた。けど蓮は地面に倒れ、なかなか起き上がれない。

雪にまみれ、ゴホゴホと咳をする。

「僕にかまうな! 雪がクッションになって体は無事だ! 琴葉は会場へ走れ!」

蓮が叫ぶ。額を切ったのか、血が流れる。

「でも!」

「あとから必ず追う! 君の演奏は必ず聴く! だから今は走れ! 振り返らず走れ!」
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