QUALIA ー最強総長×家出少女ー
蓮の言葉に、私は覚悟を決め、走った。

残り8分。いや、7分。

道は雪が積もり、足を取られる。ヒールだと走りにくい。私は靴を脱ぎ捨てた。

「蓮、ありがとう…」

足の裏に直に雪の冷たさを感じる。ドレスは薄手で、突き刺すように肌は寒く、吐く息が白かった。

けど、私は足を止めなかった。

「痛っ!」

雪で見えない石を踏んだ。足に細かい切り傷がいくつもでき、血だらけになっていく。

目には、涙がたまってきた。みんなのこと。ルナのこと。これからのこと。色々な想いが溢れる。

けど、私は足を止めなかった。意地でも止めたくなかった。

それにもう、泣きたくない。逃げたくない。自分に負けたくない。

上を向く。涙を止める。

雪がヒラヒラと真っ黒な夜空から舞う。
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