QUALIA ー最強総長×家出少女ー
「蓮!!」

私は蓮の手を握る。蓮はにこりと笑う。おでこにはガーゼをしていた。

「間に合ったみたいだね。僕はここで見守ってるよ」

私はうなずく。少しだけ緊張が解けた気がした。けど、蓮の手を握る私の指が、小刻みに震えていることに気づいた。

そして蓮も、足が震えていた。

「次はエントリーナンバー27番、美月琴葉様です」

英語でアナウンスされる。一瞬、私だと気づかなくて、蓮が出番だと教えてくれた。

蓮の目をチラリと見たあと、ステージへと登る。

まぶしすぎるライトが、目の前を別世界のように照らす。舞台袖の暗さとのギャップで、少しだけ目がくらむ。

ステージ中央には、黒く光るグランドピアノがあった。まずは観客席に向かって一礼する。

ステージのはるか向こう、二階席まで満員だった。テレビカメラも世界中から来ている。私が今まで出演したどのステージよりも多い。

体の震えが止まらない。口がカラカラに渇き、舞台袖へ戻りたくなる。

大丈夫。大丈夫。自分に言い聞かせる。

練習通りにやればいい。

何もかも全部無視して、自分ができることを全てやりきれば、きっと結果はうまくいく。

観客から背を向け、ピアノへと向かう。

そのとき。

「琴葉っ!!!」
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