QUALIA ー最強総長×家出少女ー
篤史さんは丸くなったけど、相変わらずSっ気がある。

「今日の演奏は、ルナさんの記憶を曲にしたんだろ?」と颯太君。

「うん。分かったんだ」
「聞いた途端、ルナさんのことを思い出したからね」

颯太君は涙をぬぐう。

「ずっと我慢してたけど、僕もずっと立ち直れずにいたんだ。けど今日の演奏で、前を向こうって勇気がもらえたよ」

颯太君は微笑む。うれしくなって、私は昔みたいに、颯太君の頭をなでようとした。

あれ? 手が届かない。

「残念。今度は僕が可愛がる番だね」

颯太君は私の頭をなでた。立場逆転。悔しいような、うれしいような。

「琴葉様」

声をかけたのは審査員の人達だ。

「素晴らしい演奏でした。規則上、失格とはなりましたが、実質的にはあなたが優勝で間違いありません」

「ありがとうございます」

握手を求められ、私は審査員長のおじいさんと握手する。一礼し、彼らは去っていく。

「直々にあいさつにこられるとは、偉い人達にもよっぽど気に入られたな」

「石黒教授!」
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