QUALIA ー最強総長×家出少女ー
慧さんが驚いたように声をもらす。
今、フルネームで呼ばれた気がする。
慧さん、私のこと知ってるんじゃ…?
「慧、この子知ってんのか?」
慧さんは慌てて顔を背ける。
「いや、ありえない。他人の空似だ」
奥へと進むほど、暗闇が増してくる。
けど、もう少しで総長の顔が見える。
ソファーの近くまで来ると、私達を出迎えるように電気がついた。
「よう将冴。道理で遅いと思ったら、子犬を拾ってきたようだな」
ソファーに座っていた黒髪の男が、顔を上げる。真っ赤な目に、敵意のこもった気配。
その瞬間、不思議な感覚が私をとらえる。
まるで、意識のある夢を見ているよう。
その人……ルナは一目で、夢に出てきたあの男の子だと分かった。
もちろん、総長のルナは中学生には見えない。多分、20歳は越えている。
けれど、私には分かる。ルナは夢に出てきた男の子が成長した姿だと。
「ルナ。琴葉って言うんだ。帰る家がなくて困ってる」