QUALIA ー最強総長×家出少女ー

私の言葉に「なんだ?」とルナは聞き返す。

「あなたは私と、昔会ったことはあるんですか?」

ルナは一瞬だけ、目を見開いた。

そして細い息を吐く。

動揺したの? いや、まさかね。

「ポインセチア…」

ルナは小声で呟いた。

「えっ?」

ポインセチア?

なんのこと?

「夜明けが近い。早く帰れ」

ルナはそう言うと、振り返ることもなく、みんなのもとへ戻っていった。

東の空が、少しずつ明るくなっている。

もう、そんな時間なんだ。

ポケットを軽く叩く。

私は車には行かず、かといって将冴さんやルナのもとにも行かなかった。

「ごめんなさい。一瓶だけもらいます」

酒盛りしている男達から、こっそりとワインを盗んだ。

それを持つと、森のさらに奥へと進む。

しばらくは誰にも見つからない場所がいい。
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