御曹司は魔法使い⁉︎
「寿貴⁉︎どうしたんだ?」

「………花を迎えに来た。」

「え?」

驚いた顔で、寿貴先生と私を目で行き来する松村さん。

「え?なんで⁇
お前…今、花って…。」

松村さんが絶句するのもちょっとわかる。
私だって、寿貴先生が『花』って呼ぶたびに、未だにドキッとしているから。

「こいつの名前は花だろう?
間違ってないぞ。」

「…。」
「…。」

それはわかってる。
松村さんはそんな事を言いたいわけじゃない。

「寿貴先生?
1人で帰れるって言ったじゃない。
お父さん以上に心配症だよ。」

「…花ちゃん?」

ここで会話を成り立たせるのは私しかいない。

「すみません。今日は会えないって言ったんですけど…心配症で、来ちゃいましたね。」

「…2人は付き合っているの?
いや、ラウンジではそんな感じ全くなかった…というか、あの日初めて会ったんだったよね?」

「あ、はい。ご質問の順番にお答えすると、
『いいえ』
『はい』
ですね。」

「じゃあ、付き合ってないんだね?」

チラッと寿貴先生に視線を送る。
でもブスっとした表情のままだ。
不機嫌になりたいのは私の方だ。
まったく。

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