御曹司は魔法使い⁉︎
ワンコールもしないうちに電話はつながった。
どうやら、一度しか会った事ないのに、寿貴先生も父の行動は読めていて、スタンバイしていたようだった。

そうして待つ事、8分。
本当に最速で寿貴先生は現れた。

…実はこの行動は、かなりポイントが高い。
せっかちな父を待たせなかったのだ。
それに誠意も伺える。

「夜分にお邪魔して申し訳ございません。
朝倉社長、桜川寿貴です。」

「君か……」

父は少し驚いているようだった。
なんだろう?

「君の方が来るとは思わなかったよ、寿貴くん。」

え?君の方?

「…周だと思われていましたか?」

あぁ!
そうだった。
浮いた話のない娘の、突然の縁談だ。
選択肢を考えれば、父の中では寿貴先生か周さんだったんだろう。

「…まあ、普通そう思わないか?
彼はあの時、完全に花をロックオンしていたからね。ちょっと意外だったよ。」

「エェ⁉︎
お父さん、周さんの気持ちに気付いていたの⁉︎」

「…周さんの気持ち?
なんだ、あいつはもうアクションを起こしたのか?」

「あ!…えっと…その…」

「周も、ほぼ同時にプロポーズしていました。
…何故か、私の方に軍配が上がりました。」

ああ、言っちゃった。

「そうか…。
…なるほどな。…それで?」

そこで寿貴は跪いて頭を下げた。

「花さんとの結婚をお許しください!

…花さんの明るくて、可愛くて、仕事熱心で…それでいて細やかな気遣いを持っているところに惹かれました。
この歳まで、女性に全く興味が持てなかった俺には、この出逢いは奇跡なんです。
必ず幸せにします。
どうか、結婚をお許しください!」

父はソファから立ち上がって、寿貴先生の側までやってきた。

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