御曹司は魔法使い⁉︎
「おめでとうございます。
元気な男の子ですね〜!
寿貴先生、おめでとうございます!」

「あ、ありがとう!
花、花、大丈夫か⁉︎」

「…うん、うん。産まれたねぇ…」

「花! ありがとう!
ありがとうな!」

ポロポロ涙を流している寿貴先生。

「後産が終わったらすぐにカンガルーケアしていただきますからね。
あ、寿貴先生、臍帯切りますよ!
こっち来て!」

年配の助産師さんの前じゃ、さすがのセンター長も、子供扱いだ。
この方、吉田助産師は、長年桜川産婦人科に勤めて来られた助産師さんで、前医院で助産師長を勤め上げられた。
その後、ベリヒルホスピタルに移ってからも、嘱託として他の助産師の指導に当たられていると言う、超ベテランの助産師さんだ。
御年、70歳と聞いている。
実は寿貴先生や美咲さんも取り上げたらしい。

そこでまた陣痛の波が来た。

「胎盤が出ますよー。
はい、いきんで!」

「ンー!」

後産はスルッと簡単に終わった。

「あぁ、可愛いねぇ。
この手で寿貴先生のお子を取り上げることが出来るなんて、夢のようだよ。」

その言葉で、私は本当に寿貴先生の赤ちゃんを産んだんだと、実感が込み上げてきた。

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