御曹司は魔法使い⁉︎
「花ちゃんはどうなの?
社長から何も聞かないけど、お相手はいるの?」

「えー?いませんよ。
父が何も言わないのは、単に私に相手がいないからですよ〜。」

「いやでも、病院の先生方から声かかったりしない?こんなに可愛い店員さんがいて声をかけないなんて、皆んなどうかしてるんじゃない?」

「赤城、余計な事を言うな。
花にはまだまだ早い。
跡継ぎなら、花は気にしなくていいんだ。
蓮のところに、真(しん)と宣(せん)がいるからな。
ずーっと家に居たら良いんだ。」

「…。」
「…。」

蓮叔父さんのところは確かに子供が4人。
長男が真くん。双子で長女の泉(いずみ)ちゃん、次女の環(たまき)ちゃん、次男の宣くんだ。
双子は今年社会人1年目で、真くんは朝倉コーヒーに入社した。
もちろん私も真くんが継いでくれる事に異論はない。

ただ、問題はそこじゃない。
いつまでも家に居ろって?
うちは確かに3人家族で仲良しだけど、私だっていつかはお嫁に行くつもりなんだけどな。
今のところ、全く当てはないけれど。

「社長、それはないでしょう。
花ちゃんだって、そろそろお年頃なんだし。
花ちゃん、本当にお相手いないの?」

「うーん。全く。
残念なことにいないんですよねぇ。
でも、いつかはお父さんとお母さんに孫の顔を見せてあげたいとは思ってますよ?
信一郎くんみたいに。」

「…。」

「社長!なんでそこで黙るかな。
こんな親孝行なこと言ってくれてるのに。」

「…でも、花が嫁に行くなんて…
考えられないだろう?
花が1番好きなのは、お父さんのはずだ!」

「出た…。」
「…。」

そう。父は子離れ出来ていない娘依存症。
有り難いことに、溺愛されているのだ。

「お父さん…、お父さんにはお母さんがいるじゃない。私だって、いつかは結婚してみたいと思ってるのよ?
まあ、今は仕事が楽しいから、しばらくはお父さんにお世話なると思うけどね?」

「いつまででもお世話になっていいぞ!」

「社長…。
本当に相変わらずですね。
花ちゃんが小さい時から全く変わってないじゃないですか〜。」

「うるさい。
は、花が、よ、よ、嫁に行くなんて…」

あー、始まった。
私が嫁に行くと想像しただけで、悲し過ぎて涙が出るらしい。
朝倉コーヒーの社長が。
イケオジで通ってる、ファン多数の朝倉仁が。
まさかこんな姿になっちゃうなんて、想像つかないよねぇ。
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