御曹司は魔法使い⁉︎
だし巻きサンドを専用のボックスに入れ、後片付けを手早く済ませたところで、寿貴先生が現れた。


「用意出来たか?
そろそろ帰るぞ。」

「あ、はい!」

なんか、なんか、なんか!
これからデートみたいじゃない⁉︎

と言っても、デートをしたことがあるわけでなく、よくわからないんだけどね。

学生時代、男の子と遊びに行くにしても、全てグループ行動だった。
それに、グループで遊びに行っても、友達にはちゃんとお相手がいて、私はいつも幼馴染の親友と二人でいることが多かった。私って、モテなかったからなぁ。
いつの間にか170センチに達していたこの身長の高さもモテない要因だったのかもしれない。やっぱり、小柄で華奢な子の方が可愛いもんね。

従兄弟達は皆、同様に背が高くて、小さな時からあまり意識したことがなかったんだけど、女子大に入った時に、皆んなを見下ろしている自分に気づいた。
なんとなくね、ただ背が高いだけで、ちょっと控えている自分がいるのだ。
私は可愛くない、ってついつい思ってしまう。長身がコンプレックスなんだなー。

でも、桜川家は背が高い。
院長先生も寿貴先生も明らかに180を越しているし、美咲さんもヒールを履くと完全に見上げる。颯爽と歩く美咲さんは、私の憧れだ。私もコンプレックスから抜け出して、あんな風に堂々と振る舞いたい。

「どうした?」

「いえ、なんでもありません。」

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