【短編】乙女戦隊 月影〜Dead Or Alive〜
「月よ!あなたは、見ない方がいい。あたし達の戦いを!美しいあなたには、見せたくないから!」

と言うと、あたしはダッシュした。

「恥じらいキック!」

戦闘服の癖に、なぜかスカートが短いあたしは、蹴りを半田にたたき込んだ。

「パンツが見えてる」

哲也は顔を押さえた。


「恥じらう心があるかぎり、あたしの中の乙女は消えない!恥じらいの乙女レッド!」

あたしは、きりっと敵を睨む。

「気分はいつもブルー!テストは、いつも山が外れる!低血圧の乙女ブルー!」

「だるい…だるびっしゅだわ。まじで…」

という乙女グリーンを下げると、

「闇があるから、あたしがいる!悪より、黒いあたしが、悪を断罪する!月夜の刃!乙女ブラック!」

そして、隣にいたピンクが続く。

「えっと…早く帰りたい。補習が終わった乙女ピンク?」

最後に、加奈子が前に出る。

「男がほしい!欲望の乙女とどめ色!」

語呂が悪い。

いつも、最後は変な空気になる。

それが、乙女戦隊月影だ。


「お兄ちゃん!こ、これはね」

頭をかかえていた哲也は…今度は、深くため息をつき、

「お前達は知ってるのか?乙女戦隊になれる者の資格を」

「え?」

「成績が平均か、それ以下…学年トップは乙女戦隊にはなれん。学業第一だからな…。乙女戦隊になれる者は、別に進学を気にせずに、戦える暇がある者しかなれんのだ」

「え――!」

「お前達が、眼鏡をかけてるのは、せめて…賢く見せる為だ」

目眩を覚える哲也に、半田がきいた。

「魔将軍ザン様。いかにしましょうか」

「そうだな…」

哲也は、あたし達を見つめた。

「魔将軍!?お兄ちゃんが、やつらの幹部?」

絶句するあたしに、哲也は言った。

「里奈…いや、乙女レッド!今は、家庭の事情を挟んでる場合ではない!お前が、正義だと思うなら!自分の道をいけ!」

「将軍!」

「かまわん」

哲也は、あたしに背を向けた。

「お兄ちゃん!」

あたしの声を無視して、哲也は歩きだす。

「どうして…」
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