【短編】乙女戦隊 月影〜Dead Or Alive〜
「あたしの携帯があ〜」

もとの大きさに戻った携帯を、あたしは手に取った。

もう完全に破壊されていた。


「恐るべし!乙女戦隊月影!」

おとなしく様子を見守っていた半田は、脱ぎ捨てていた白衣を拾い、肩に羽織った。

「今日のところは、おとなしく引き下がる!だがな!これを勝利と思うなよ」

半田は、あたし達一人一人を指差し、

「この中に、裏切り者がいる!」

「え!」

「まだ本人も自覚はないようだが…数を数えてみろ!お前達は五人のはずだろ」



「あっ!」

あたし達は、同時に声を出した。

レッド、ブルー、ブラック、グリーン、どどめ色…そして、新しく加わったピンク! 

「六人だあ!」

と気付いた時には、もうピンクはいなかった。

どうやら、いつのまにか帰ったらしい。

「ハハハ!誰が、敵なのか!互いに、疑心暗鬼に陥るがよいわ!ハハハ」

高笑いをしながら、半田は保険室に戻っていく。下っぱも踊りながら、ついていく。



「あたし達の中に…敵?」

折角、ピンクが見つかったのに…敵が紛れ込んでいるなんて。

それに、真ブラックはどこに。

そして、一番大事なのは、

あたしの携帯が使えないこと。

通話料も払えないのに、新しい機種なんて、買えない。

あたしは、一気にやる気がなくなった。

「乙女レッド…やめよかな」






「うん?」

スーパーで、買い出しをしていた哲也のもとにメールが来た。

携帯を開け、内容を確認すると、

「月影の勝利か…」

哲也はフッと笑うと、じゃがいもを買い物かごに入れた。


「後は…隠し味に…」

スーパーの中を歩き回る哲也。

頭の中に、記憶が甦る。


(俺は、あの日…魔へと落ちた)

月夜の晩。 

哲也は、ある部屋に通された。

「待っていたよ。結城くん」

部屋の奥で、背を向けていた男は窓の外で輝く満月を見つめていた。

「君は、私のともだちになってくれるのかい?」

哲也は息を飲んだ。

(その夜…俺は奇跡を見た)

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