響は謙太郎を唆す
その日、響は謙太郎が塾に行くので教室で見送った。
謙太郎が手を差し出したので、響も謙太郎の手に触れ、2人の間で、しばらく指と指が絡まった。
名残惜しく手が離れる。
一緒にいたい。
近い未来、共に歩けるように、今、努力する。
絶対めげない。
新学期から2ヶ月ほどたち、秋になっていた。
停学騒動から特に何もなく過ごしていたが、謙太郎がかなり警戒しているので、学校でしか会っていない。毎日、学校があるのが有難かった。
(⋯⋯ で、私は、今日は何だろう⋯⋯ )
放課後、担任から響は呼び出されている。
久しぶりに。
担任は、停学騒動から響に対して何となく気まずそうにしていた。
今日、呼び出す事も、目を合わさずに伝えてきた。
響はただでさえ、大変そうな謙太郎には言わなかった。
あんなに家に帰るのが嫌そうな謙太郎を見ているだけでも辛いから、これ以上、彼の心配事を増やしたくない。
呼び出しの内容も分からなかったから、言われてから考えようと思う。
言うのも傷つくし、言われない事も傷つく。
付き合って、気持ちが通って、でも終わりじゃない。
そこからが始まりなんだな、とつくづく思う。
相手を思うからこそ、大事に大事に絶対離れないように、慎重に共に進んでいこう、と思う。