響は謙太郎を唆す
何⋯⋯ このお芝居のような空間、と響は思った。
謙太郎のお嫁ちゃん。
この人達何の話をしているの?
一緒に暮らしている⋯⋯ 謙太郎が言ってたお客さんってこの人?
響を無視して、何のためにこんな話をしているのか。なぜ響がここに、わざわざ呼び出されたのか。
その後も一向に響には話しかけない。
ただ2人は親しく、まるで親子のように謙太郎の話を続ける。
《あの子ったらね。
この沙夜ちゃんが初恋でしょう?
ぼく、結婚するよってね。》
《謙太郎さんと2人で一緒に行った時は、本当に可笑しくって、ね、おばさまも後から来られて。》
《謙太郎の口癖は、立派な医者になる、だったわ。
お父様も楽しみに⋯⋯ 。》
延々と続く話。
担任も薄っすら笑いながら、相槌をうつ。
私はなぜここに?
なぜこんな話を聞かされてる?
突然、謙太郎の母親が響を見た。