響は謙太郎を唆す

(えっ?私?)

と思った瞬間、急にきつい口調で、

「だから、もうお分かりになって?」

と言われた。

響は急に聞かれて内容も分からなかったし、今までの話と何がどうつながっているのか、よく分からなかった。
返事もできずじっとしていたら、母親はイラついたように、

「だから、身を引いてくださいな。
沙夜ちゃんも可愛そうでしょ」

「おばさま、私は大丈夫ですわ。
謙太郎さんの一時の気の迷いなんて、どうって事ないです。
ちゃんと、彼、考えてますって」

何これ。
私、もしかして、愛人みたいに扱われてる⋯⋯ ?とやっと響は気がついた。

この人、沙夜子さん、本妻のつもりなんだ。
でも
本当に
本当にこの人は謙太郎の母親なんだ。
母親と彼女のお気に入りの婚約者なんだ。
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