響は謙太郎を唆す


「何か分からないのに、行かない!」

響が家のドアまで走って下がったので、警官はため息をついた。
と、突然、家の扉の中から姿は見えないが、

「説明しろ」

と低い凍りつくような声がしたので、警官は一気に身構えた。
警官は家の扉を睨んだまま、早口で言った。

「今日の昼ごろ、女性に熱湯をかけて、怪我させましたね」

(えっ?昼ごろって⋯⋯ ?)
響は家の扉に体半分入りながら話を聞いていたが、全然何の話か分からない。

「普通に学校にいました⋯⋯ いま帰宅して、制服のままです⋯⋯ 」
「ですから、学校が現場ですよ」
「?」
「都築 紗代子さんに、ポットのお湯をかけ、重傷を負わせた、と」
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