響は謙太郎を唆す


「戸波です。先生⋯⋯ 」

先生の声を聞いたら、(一緒にいたし)と思って涙声になった。何だか焦って、怖くて、あわてる。

「私、やってない!」
「どうしました?」
「警察が家に来て⋯⋯ 私がお湯をかけたって。私、やってない!」

先生は息を飲んだ。

「警官がいるの?今?」
「連れていかれちゃう、紗代子と、お母さんも⋯⋯ 嘘ついて⋯⋯ 」

泣いてたら、先生が大きく息を吸って、

「すぐ行きます。その前に、電話かわりなさい。警察に」

おそるおそる扉から出て、門扉越しに携帯を渡した。
レンが中からドアが閉まらないように、薄く押さえて開けていた。
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