響は謙太郎を唆す
11 響を連れ戻す
深夜にかかってきた響からの電話。
電話口で泣いているような様子に、レンは、
「大丈夫だ、どこにいる?」
と優しく聞いた。
響はこの辺りから3時間ぐらいかかる、海のあたりの、単線の終点の駅の名前を言った。
「無人駅で、真っ暗⋯⋯ 公衆電話でかけてて⋯⋯ 」
「すぐむかえにいく!駅にいるんだ!」
最後までレンが言う前に、電話が切れた。
公衆電話のお金が足りなくなったのだろう。
すぐレンが携帯と財布をポケットに入れ、もう玄関に向かった。
「ナイト、運転しろ!」
謙太郎もすぐに急いで靴を履き、車に乗ってエンジンをかけ、ナビに駅の名前を入れ目的地にした。
助手席にレンが乗り、バックミラーでみたらマリもとっくに後部座席に座っていた。
謙太郎は車庫から車を出しながら、「家は鍵を誰も閉めずに、開けっ放しなんだ」と響が言ってた事を頭の中で思い出した。
レンもマリもすぐ出てきて、鍵どころか、電気もつけっ放しだ⋯⋯ 。
すぐに出発し、高速をとばす。
道も空いていて1時間ちょっとぐらいで着きそうだが、こんな夜中に寂しい真っ暗な無人駅で響が待っていると思うと、1秒でも早く側に行ってやりたかった。