響は謙太郎を唆す

時間より少し早く先生が教室に入ってこられた。

今日の1時間目は、クラスのホームルーム、昨日響を呼び出した担任の先生が教壇に立った。
響は慌てて前を向いて座り直した。

(見た目は、優しそうな先生なのに)

昨日の放課後、呼び出された時を思い出す。
響はこの先生に厳しく注意された。

今まで何の問題も起こしていないのに。

ましてや初対面で書類だけを見て問題を起こす子だろうと決めつけ、やってもいない事をあれだけきつく注意するってどうなんだろうと思う。

黙って素直に聞いていただけなのに、一方的に毛嫌いされてしまったようだ。
響以外の生徒には、いい先生なんだろうか。

「新しいクラスで顔合わせもかねて、自分の名前を言いながら簡単に挨拶しましょう」

と先生に言われ、左前の席の生徒から順に立ち上がって挨拶し始めた。

先生は、一人一人に、ちょっとしたコメントを入れる。
その生徒の部活動や、趣味、特技に、面白く口を挟む。
< 22 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop