響は謙太郎を唆す

「俺は、響が好きだ。
会った瞬間から響だけだ。
響の髪も、おでこも、目も、唇も、頰も、手も、体も、声も、すべて好きだ。
響の料理が好きだ。
響の家庭環境も。
響の考え方も好きだ。
潔さも」

謙太郎は響の目をまっすぐに強く見ながら、さらに言った。

「響の一言で、俺が俺の思う自分になれるんだ」

響は、心の塊が溶けていくように感じた。
謙太郎の真っ直ぐな、温かい気持ちが、全身にじわじわと回るような感じがした。
砂からそろそろと手を出して、健太郎の背中に手を回した。

「響が俺の事を一生懸命に考えてくれるのも好きだ。
俺の事を思ってくれてるのも好きだ。
俺の周りは、自分を押し付けてくる女ばかりだった。俺の気持ちなんて、全く考えずに自分のためだけに俺を欲しがる。俺を無視して押し付けられてばかりで辛かった」

響は謙太郎の傷ついた気持ちを感じた。
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