響は謙太郎を唆す

我慢して黙って座ろうと思ったら、後ろから大きな声がした。

「俺はいい名前だと思うな」

パッと振り返る。
謙太郎が椅子にもたれて両腕を組み堂々と座って、まっすぐ響を見ていた。

「『きょう』ちゃんよろしくー。親に愛されてんだろ。特別な名前だよな」

身体中がじわっとした。
ずっと変な扱いだった。
でも変な名前をつけた親じゃなくて、愛されて特別な名前だって。

大きな声で笑いたいぐらいだった。
ザマーミロ、内藤 謙太郎だってちゃんと常識ありだわ。

親は愛情を持って子供の名前をつけてる、どんな名前だとしても。

ちょっと気が晴れた。

大人しく「よろしくお願いします」と小さめの声でクラスメイトに挨拶して座った。
でも後ろの謙太郎を強く意識していた。

先生は「はい」と言って謙太郎の発言には何も答えず「では、後ろの席の人」と謙太郎を指名した。
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