響は謙太郎を唆す
「俺の友達2人は購買にパンを買いに行ってる。俺は弁当だから」
響が、
「はい」
とだけ小さく答えたら、
「響、大人しいじゃん。昨日みたいに思ったこと言えよ。もっと威勢いいんだろ、本当は」
と、謙太郎がじっと響の目を見てきた。
確かに響は、わざと大人しくしている。
でも本当は全然大人しくなんてない。
先生が怪しむのは間違っていない。
ここが学校でなかったら、響はさっき完全に言い返していただろうと思う。
『ちゃんと考えてはっきり言えばいい』
響は謙太郎に対して、そうすべきだと昨日言ったんだった。
「お母様の丁寧なお弁当、高3男子、珍しいなって思ってた」
と、響は言った。
謙太郎はすっと真顔になった。
本人にとっても核心だったのかもしれない。