響は謙太郎を唆す

暑苦しいぐらいの手の込んだ味がした。

謙太郎は自ら取り替えて欲しいと言った割に、遠慮がちに箸を持ったままだったので、

「言っとくけど、私、かなり上手いからね」

と、わざと言った。

謙太郎は響の強気な発言に食べやすくなったみたいで、ホッとしたようにお箸でとり、食べ始めた。

「料理作るのが好きなのか?」

と響に聞いた。

「まぁ、困ってる子供が数人で来たって、美味しいもん食べさせてやるわってかんじかな」

謙太郎はすごく嬉しそうに笑った。

「じゃ、俺は?困って響ちゃん家、行っちゃおーかな?」
「困って?お母様の手料理なんじゃないの?」

また、謙太郎はすっと黙った。

やっぱりお母様の話題やめてあげようと思う。
響の家だっていろいろ事情があるし、謙太郎が御曹司でもマザコンでも響には何の関係ない事だ。

< 29 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop