響は謙太郎を唆す
暑苦しいぐらいの手の込んだ味がした。
謙太郎は自ら取り替えて欲しいと言った割に、遠慮がちに箸を持ったままだったので、
「言っとくけど、私、かなり上手いからね」
と、わざと言った。
謙太郎は響の強気な発言に食べやすくなったみたいで、ホッとしたようにお箸でとり、食べ始めた。
「料理作るのが好きなのか?」
と響に聞いた。
「まぁ、困ってる子供が数人で来たって、美味しいもん食べさせてやるわってかんじかな」
謙太郎はすごく嬉しそうに笑った。
「じゃ、俺は?困って響ちゃん家、行っちゃおーかな?」
「困って?お母様の手料理なんじゃないの?」
また、謙太郎はすっと黙った。
やっぱりお母様の話題やめてあげようと思う。
響の家だっていろいろ事情があるし、謙太郎が御曹司でもマザコンでも響には何の関係ない事だ。