響は謙太郎を唆す
謙太郎は、昨日の時点で同じ学年なのはブレザーのカラーでわかっていたので、今朝、探し出そうと勢い込んで登校してきたら、同じクラスで響の姿を見つけた。
響を見たらホッとして、なんだか心がギュッとした。
謙太郎が自分から女子を探して、知りたいと思ったのは響が初めてだった。
じっと見てたら響が気がついて顔を上げた。
そして目が合ったら、ちょっと赤くなって、小さい声で、
「別に食べに来てもいいよ⋯⋯ 」
と言った。
核心をつくような事をはっきり言うくせに、自分の発言に気を使っている。
謙太郎の気持ちを考えてくれている。
(かわいいな)
と思ったら、何だかくすぐったいような気持ちがした。
謙太郎はフッと笑って言った。
「あさって水曜日だろ。水曜だけ弁当から解放してもらえるから、学食行こうぜ」