響は謙太郎を唆す

謙太郎だと思って、階段の登り口を見た。

響はちょうど階段を上がりきった謙太郎と目が合った。

謙太郎は響を見るなり(えっ?)という表情をした。
響も(えっ?)と思った。

謙太郎は体格も良く、態度だって大きい。制服もかなり着崩しているから、私服も派手なのかな、と響は勝手に思っていた。

が、予想に反して、謙太郎は大人しく坊ちゃん風の服を着ていた。
アクセサリーもない。
生地のよさそうな襟付きのシャツに、まさかのチノパン、靴もローファーで、制服より制服みたいだった。

謙太郎は響を見ながら席まで近づいて、

「響?だよな?」

と聞いたので、

「謙太郎だよね?」

と言って笑ってしまった。
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