響は謙太郎を唆す
「医学部に行くの?」
謙太郎は目をノートからあげた。
響と目が合った。
謙太郎は笑った。
諦めてるような、しょうがないな、ってかんじの笑い方だった。
響はもう一度聞いた。
「家の病院?を継ぐの?」
謙太郎は響を見た。
「だったら、どうだってんだ?」
笑わなかった。
謙太郎はぜんぜん笑ってなかった。
ぜんぜん、希望に燃えてるとも感じなかった。
照れてるのとも違う。
何だろう、聞いたら嫌みたいだった。
響は2個目の地雷を踏んでるのかもしれなかった。
毎日のあのお弁当も、今日の服装も、将来も、謙太郎は何か触れて欲しくないんだと響にはわかったのに、言いたかったし、謙太郎の本質を見せて欲しかった。