響は謙太郎を唆す
「自分が、そう決めて、ちゃんと考えて、思った通りならいいんじゃないの?」
「⋯⋯ もし、違ったら?」
謙太郎の声は小さかった。でも聞こえた。誰にも言ってないんだろう、と感じた。
「違ったら、可哀想だと思う。謙太郎が。
我慢し続けるなら、勿体ないと思う。そんな生き方」
「⋯⋯ もし、響なら?どうする?」
謙太郎が響を見ていた。
何をどうするって聞いてるのか。
病院を継ぎたくないのか、
そんな話をしてるのか、
目的語が分からなかった。
(でも私なら?私だったら⋯⋯ )
「私は、はっきり信じてる事をやりたい。そのための努力をする。
でも違うと感じてる事は、絶対したくない。
自分で考えて自分できめたい。
なりたいと思ってる自分になりたい。
自分で責任とるそんな私でありたい」
謙太郎は、しばらく黙っていた。それから
「響は何になるの?」
と聞いた。