響は謙太郎を唆す
自分の「信じている事をやりたい」と響は言った、それはそのまま、自分自身にも返ってくる。
響の思っている誰にも言ったことのない自分の将来。
言葉にするのは少し怖い、どうなるか分からない事だし、どう思われるかのかも怖いけど、
「私は、会計の資格を取って、事務所を開いて家族の助けになりたい」
「それは親の意向?」
「えっ?」
響は親の意向って考えた事なかったのでちょっと笑った。
響の親は少し⋯⋯ いや、かなり特殊だから。
「あっ、ぜんぜん!それは気にもしてなかったわ」
あっけらかんと言ったので謙太郎は言葉に詰まった。それから、
「へー」
と言ってそのまま何だか考え込むように黙り込んだ。
謙太郎は自分の将来について⋯⋯ それは響とは真逆に、親の意向しかなかったからだった。