響は謙太郎を唆す
謙太郎は、
(まだ、響に俺の気持ちを言えない)
と思った。
こんな自分が中途半端な状態で、こんな真剣な気持ち言えない。
でも絶対響は離さない。
暗澹たる気持ちで、なのに妙に明るい決意で、謙太郎は笑った。
響は、謙太郎の事情も気持ちも知らないのに、核心をついてくる。
そして、自分だけで密かに決心した気持ちを後押しするように、目の前で、響は謙太郎だけを見て、じーと謙太郎の気持ちだけを考えてくれていた。
穴が空くほど、じっと見られて、謙太郎の行動に一つ一つ反応して、赤くなったり照れたり、何か考えたり、その全部がたまらなかった。
響を手に入れて響と幸せになるために、謙太郎は自分の決意が揺らがぬよう強く願った。