響は謙太郎を唆す

3人がJポップを歌って、4人がメタルバンドを歌って、最後に「謙太郎どうぞー」となった。
いつもシメに謙太郎が歌う曲があるらしい。

「響は知ってるだろ?」

と言いながら操作する。

「俺、これが一番好きな曲なんだ」

謙太郎は、まさに今の自分の気持ちだな、と思いながら、チラッと響を見た。
響は興味ありそうにのぞいて、曲名を見て「あっ!」と息を飲んだ。

《デリバリー&マリス》と言うバンドのバラードで《sorry》というタイトル。
通称デリマリは、長年ヴィジュアルメタルとしてライブを行いコアなファンが多い。
派手な格好にかなりヘビーな曲調のロックバンドだったが、どこか生真面目でそのアンバランスが持ち味だった。
謙太郎たちも何曲もコピーしていた。
自分の一番好きな曲、いつも最後に必ず歌っていた曲が、こうして一番伝えたい想いになるなんてな、と謙太郎は響を見て思った。
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