響は謙太郎を唆す
でも!
謙太郎が嘘ついてると思う?と自分に問う。
決められた将来に、あの時確かに彼は複雑な顔をしていた。
でもそれは謙太郎が自分で決める事なんじゃないのか、とも思った。
親でもない、先生でもない。
もちろん、響でもない。
(私は謙太郎の何?)
付き合ってもいない。
告白されたわけでもない。
友達?
なのに響は、今の事も先の事も、謙太郎なしに考えられなくなっている。
今のひどい懇談の話を謙太郎に言いたい。
言って慰められたい。
どうしたらいいのか相談したい。
謙太郎に今すぐ会いたい。
言えるわけない。
皆のいる教室に真っ直ぐ帰れなかった。
こんなグシャグシャの気持ちで戻ったら、泣いてしまう。
謙太郎に全部ぶちまけてしまう。
響はとりあえず保健室に行って、布団をかぶって目を閉じた。