響は謙太郎を唆す
電車に乗って座ったら謙太郎がチケットを出した。
「響、これ、行かね?」
夏のメタルの祭典。
響はフッと可笑しくなって笑って、自分もカバンから同じ券を2枚出して見せた。
今日じゃなくて昨日までに誘われたら、いろんな話があったのに。
今の響は、こんな誘いじゃなくて、謙太郎の気持ちが知りたい。
この人は、今、たまたま音楽好きの響に言ってるだけなのか、それとも、何があっても響がいいのか。
響は返事が出来なかった。
いろいろ考えすぎて声にもならない。
「行く?」
もう一度、謙太郎が聞いた。
響は黙っていた。
しばらくして響は、謙太郎はまた電車を降りてないなと思った。
《唆す》
とか、訳の分からない言葉が浮かんだ。