響は謙太郎を唆す
クラスのみんなが見ていたけれど、そんな事を気にしている余裕がなかった。
手どころじゃない、肩をがっと抱きかかえられ、一言も発さずにどんどん歩く。
響は自分の足が地面についているのか、分からないぐらいだった。
校門を出て知らない場所を歩いた。
それから謙太郎は人気のない建物の入口で立ち止まって、響を引っ張るように連れ込んだ。
(ここって⋯⋯ )
いわゆる、ホテル?
顔を合わさないような小さな窓で、タッチパネルで指定して、謙太郎は迷いなく部屋に行き、ドアを開けて響を部屋に入れて、自分も入った。
後ろ手で鍵を閉めた。
部屋の中は窓が雨戸が閉まったみたいになっていて、昼なのに真っ暗。
謙太郎が電気をつけてくれたが、やっと響は今更ながら驚いて、
「制服で⋯⋯ 」
と、言った。