響は謙太郎を唆す
響は、担任の先生に言われた事、何も言わない謙太郎、それだけでいっぱいなのに、そのすべてを覆い尽くすように、結局、謙太郎とのキスを思い返す。
《俺の印をつける》
響はその通りになっている。
響は謙太郎のものだった。
響がチラッと謙太郎を見たら謙太郎は苦笑いした。
「俺、ずっと響と会ってない気がする。
何か言われたの?担任に?」
謙太郎は、左手でそっと響の頭に手を触れて、親指で額の生え際を撫でた。
「頼むから黙り込むなよ、響。何か言えよ」
額を優しく撫でる謙太郎の手。
大きくて優しい。
響は彼の手に自分の手を重ねた。
自分の頭の中で思う事を追う。
ごちゃごちゃに考えてた事が、少しずつまとまって、形になったように思った。