響は謙太郎を唆す
誰の言葉にも惑わされない。

謙太郎だけは信じようと。

響は謙太郎の手をギューっと握って、大きながっしりした手を自分の顔の上に引っ張って、彼の掌に唇をつけた。

まだ自分の決心が怖かった。
謙太郎を唆していて、迷惑かけてて、
彼にはお嬢様の彼女がいるって。

でも、こんな風に手が温かくてやさしいから、響は響らしくいるしかない。

信じてるけど、一個だけ、それだけ聞いていいかな、弱い自分だ。

「謙太郎、お付き合いしてるお嬢さん、がいるの?」

顔を見ては聞けなかったから、響は謙太郎の手で自分の顔を覆い隠していた。

「はぁ?俺は響といるから、24時間忙しいんだよ、そんな暇あるか! 」

と謙太郎が呆れたように即答した。
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