響は謙太郎を唆す

謙太郎は(やっぱ、何か言われたんだな)と思った。

昨日。
謙太郎は親とケンカになった。

ずっと真面目に進路について悩んでいたのに、母親から言われたのは、信じられない言葉だった。

『程度の悪いお嬢さんに、あなた、騙されてるんじゃないの?』
『先生も、大変ご心配下さってるのよ』
『こんな大事な時期に、悪い子に巻き込まれて、かわいそうに』
『ちゃんと手を打ってあげるから、安心しなさい』
『小夜子ちゃんと婚約をすすめるから、あなたは何の心配もいらないのよ』

親には長い時間をかけて、きちんと話しをしていたのに全く聞こうとしてなかった。
今まで、カーッとならないように、極力落ちついて自分の気持ちを話してきた。

なのに、それどころか、どこから聞いたのか勝手に響の事を言い出したので、さすがに謙太郎もブチ切れて怒鳴り合いになり、昨日、制服のまま飛び出し朝までファミレスにいて、今朝そのまま学校に行ったのだった。
< 90 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop