祖父母の家は、この島には似合わずに小洒落た西洋の外見をしていて、庭は祖母の趣味で様々な色の花で埋め尽くされていた。

 その中央には、花を感じながらお茶を飲むのに相応しい、白色のバラの彫刻が施されたガーデンテーブルとガーデンチェアが置かれている。

 リビングに行くと、ちょうど壁に掛けられている時計は十五時を指しており、ダイニングテーブルの上にはマドレーヌと紅茶が並べられていた。その香りが、ぷうんとしてくる。

「そろそろ帰ってくると思って用意してたのよ」

 品の良い祖母は、花柄のエプロンをして洗い物をしていた。

「さっき、海岸で僕と同じくらいの年の女の子に会ったんだ」
「あら、そうなの。……多分、音ちゃんじゃないかしら」 

「ああ、そう。そう言ってた」
「音ちゃんと話をしたの?」
「ああ、そうだよ」
「あら、そうなの。それはよかったわ。ぜひ、仲良くしてあげてね」

「知ってるの? あの人のこと」
「ええ、音ちゃんは一年位前にここに来たのよ。確か、おばあさまと二人暮らしじゃないかしら」
「へえ、そうなんだ」
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